『宝石』投稿の体験はあったが、本格的に小説を書きはじめたのは、1970年ごろ。

頭の内外ともに怪しくなっている自分が、どの程度まで本格ミステリの執筆に耐えられるか？ マジで不安だった。さいわい『アリスの国の殺人』を書かせてくれた編集者が、マガジンハウスに移っていたので、我が儘をいってこんな本を出した。今回と来月刊行のアニメ本は、ともに三稿までとったので、そうひどいミスはないと思っていた……のだが、見本ができて斜め読みしたら、もうアラがみつかった。情けない作者だな。刈谷さん、ごめんなさい。
とはいうものの、全体の出来ばえはどうなんだろう。細かい部分は見通せても、作品そのものになると正直わからない。読者のご批判を待つほかないと、神妙な気分でおります。土屋隆夫さんの域に達するのは無理でも、大横溝に伍して８０歳近くまで本格を書きたいと思っているのですが。

掲示板ですでにご紹介いただいてしまった拙作です。発車遅延で申し訳なし。いまさらながら裏話をしますと、今回は話の中心になる女の子も被害者ふたりも、ほとんど表舞台に出ずじまいという、妙な作品になりました。レギュラーの少年少女を動かしていたら、自然にそうなったのであって決して最初からもくろんでいたわけではないのですが、長いシリーズでレギュラーを大切にしようとすると、ついこんな形になるのですね。……と自分でびっくりしているのも妙なもんだけど、ミステリとしてはまあ恰好がついたと思います。ガチガチの鉄道ミステリも書きたいが、ほんわかムードのお決まり路線もあえてやってみたい。その両方に義理を立てると、ろくなことにならないはずだが、針の穴にラクダを通す冒険もやってみたい。と、構想だけはいっちょ前にあれこれ悩んでいるのです。光文社文庫全体が、ですが今回から装丁が一新されていますので、ご注意ください。
それにしてもこないだ生まれたばかりのような気がしていた竜くんが、次作でははや高校二年になるのだなー。作者としては孫みたいな気分です。

亡き横山光輝さんと組んだ長編が、またまた新装版としてコンビニにお目もじする。８月に第一巻が出て、毎月一回刊行、１０月で終わる。内緒話だが、本当はこの二倍の内容を考えていた。主役のひとり武虎は，のちに孟子となる──はずであったが、横山さんの入院のため急遽幕を下ろした。栗本薫さんから、文竜と酔拳の決戦がないのが残念とお手紙をいただいたが、そんなわけで恐縮する他なかった。やはり亡き天藤真さん、半村良さんから声をかけてもらったのも、いい思い出になった。ついでながら、この物語には出典など一切なく、すべてぼくの法螺でしかないものを、横山さんがキチンと画にしてくれた。めったにこぼさない横山さんだったけれど、一度だけ「黒馬隊が出る度にアシスタントが悲鳴をあげてねえ」といわれたのには、冷や汗だった。コマごとにやたらと出る黒馬を、いちいち塗らねばならないからだ。実写やアニメとはまた違う、マンガの手間の掛け方を知らなかったぼくの怠惰である。

綾辻さん、有栖川さんのセレクトで、講談社ノベルス２５周年記念として、拙作も四半世紀ぶりに日の目を見た。解説者は小学館（いいんですか？　講談社に解説を書いて）の月刊ＩＫＫＩ編集長の江上さん。綾辻・佐々木コンビの鉄道ミステリコミック『月館の殺人』が掲載された雑誌といえば、ミステリファンはご承知だろう。現在は『鉄子の旅』が連載中である。ぼくはまだお目にかかったことがないが、相当以上の鉄ちゃんだそうな。そんな方が解説役を買って出てくれたのだから、鉄道好きなあなたは買うべし。といっても、メタでパラレルワールドで懐かしムードで、でもポテトとスーパーのごく初期の主演作だから、れっきとしたミステリなのだ。端役として幼い日の辻真先も出演している。

同郷のよしみでまずリンクにあがってもらいました。ふるさと名古屋を縦横にミステリの舞台にしていただいて嬉しいッす。

筋金入りのマンガ通、筋金入りの本格ミステリ作家。脊椎動物以前の物書きから見ると、なんともまぶしい存在です。

著作権保護同盟では本当にお世話様でした。いまが一番の書きどきなのに、執筆時間を削らせてしまい申し訳ありません。

二階堂さん・小森健太朗さんの肝入りではじまった。日本語のために開発され、ヘビーユーザーが使いよさを認めているのに、なぜ閑却されるのか。悔しい。